しかし、電気自動車の利用については、走行距離や安全性、コストなどについて不安を感じている人は多いかもしれません。
1月18日に科学雑誌『Nature Energy』で発表された新しい研究は、10分で急速充電が可能であり、1回の充電による走行距離は400km以上、安全性が高く長寿命の大衆向け電気自動車用バッテリーの開発状況を報告しています。
研究者はこのバッテリーが寿命を迎えるまでに320万kmも走行でき、手頃な値段で入手可能だと話しています。
日本政府は現在、2030年中頃までにガソリン車の販売を中止させすべての自動車を電気自動車へ切り替えていくという方針を発表しています。
正直、この発表に度肝を抜かれた人も多いかもしれません。
すでに販売が行われているとは言え、電気自動車とはどの程度実用的な自動車なのでしょうか?
これまでのガソリン車同様の走行は約束されるのでしょうか?
私たちの身の回りには、スマートフォンやBluetooth接続機器などバッテリーで稼働する多くの電化製品が存在していますが、そのほとんどは長時間の充電を必要とし、稼働時間には限界があります。
うっかり充電し忘れて出勤前に焦ったなんて経験は、誰の記憶にもあることでしょう。
そのため自動車をバッテリーだけで動かすと言われた場合、給電時間や走行距離、さらにバッテリーの価格や劣化速度、それらに伴う安全性などさまざまな不安が浮かんでしまいます。
しかし、ペンシルベニア州立大学の研究チームは、そうした問題を解消する電気自動車用バッテリーを開発したと報告しています。
研究者によると、このバッテリーは10分以内の急速充電が可能で、走行距離は400km以上、長寿命で320万km以上を交換無しで走行でき、値段も大衆向けに安価に抑えられ、小型で安全性も高いのだといいます。
ではどうやって、そんなバッテリーを実現させたのでしょうか? 研究者はその鍵が、急速な加熱にあるのだといいます。
今回の研究で開発されたバッテリーは、長寿命、急速充電を実現するために、60℃近くまで急速に加熱し、バッテリーが機能していないときに冷却する機能を持っているのだといいます。
それはどういうことなのでしょう?
バッテリーに使用されるリチウムイオン電池は、周囲の温度が10℃未満の状態で急速に充電されると劣化する性質があります。
低温では、リチウムイオンがスムーズに陽極へ挿入されず、陽極表面にいびつに堆積しリチウムスパイクを発生させます。これによりバッテリーは容量を減らし、さらに短時間に大きな電圧がかかる危険な状態を引き起こしてしまいます。
今回の研究チームは、バッテリーが60℃まで加熱されると、このリチウムスパイクが形成されず、バッテリーの熱劣化も発生しないことを発見しました。
そこでチームは、充電時のバッテリーにニッケル箔を使った3番目の端子を作成し、最初は電子がニッケル箔に流れ込み、抵抗加熱によって急速にバッテリー内部が温められる仕組みを作成しました。
バッテリー内部が60℃まで温まると、温度センサーがスイッチを切り替えて通常の充電が開始されます。
ただ、バッテリーを60℃まで加熱することは、バッテリー研究の分野では危険なことだと考えられています。研究チームはこの問題を、車に組み込まれたラジエーターを使って急速に冷却するシステムを組み込むことで解決させました。
これによってバッテリーを短時間で60℃まで加熱させ、急速な充電・放電を行うことに成功したのです。
またこの自己発熱機構をバッテリーに組み込んだことで、バッテリーは低電圧で機能させることが可能になりました。
これによりバッテリーのカソード(還元反応がおこる電極)に、リン酸鉄リチウムという熱的に安定した低コストの材料を使えるようになりました。通常のバッテリーのカソードは、コバルトを使用しますが、これは高価な材料です。
アノード(酸化反応がおこる電極)は非常に大きな粒子のグラファイトでできており、これも安全で軽量かつ安価な材料です。
また、自己発熱によって、危険なリチウムスパイクが発生する心配もなくなりました。
今回のバッテリーは急速に加熱することで、急速充電と安全性、さらに低コスト化と軽量化を実現させたのです。
※引用ここまで。全文は下記でどうぞ
https://nazology.net/archives/79970
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Source: 車速報
10分の急速充電を可能とした「電気自動車用バッテリー」が登場 決め手は充電時の加熱