「高い目標ではあるものの、極めて妥当な目標設定だと考えている。ホンダとしても全面的に支持するとともに、全力を挙げて達成に向け取り組む」
4月23日に都内で開いたホンダの記者会見。社長就任後初となる会見で三部敏宏社長は、菅首相が表明した日本の温暖化ガスの削減目標についてこう述べた。
ホンダはこの日、2040年までに世界での新車販売全てを電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)に切り替えると発表した。
ハイブリッド車(HV)も含め走行中に二酸化炭素(CO2)を排出する新車の販売はやめる。
新車販売全てをEVとFCVとする計画を出したのは、国内の自動車大手ではホンダが初めてだ。
同社の2020年の世界販売台数は445万台で、EVとFCVの販売比率は合計で1%未満だ。
地域別では、先進国はEVとFCVの割合を2030年に40%、2035年には80%に高める。
2024年に北米でGMと共同開発した大型EV2車種を投入し、2020年代後半に別のEVも発売する。
中国では2022年に新型EVを発売し、今後5年以内に10車種のEVを投入する。日本では2024年に軽自動車のEVを発売するという計画だ。
■低公害の独自エンジン「シビック」の伝統があるのに…
当時、二輪車メーカーとしての知名度しかなかったホンダが自動車で世界にその名を知らしめたのは「CVCC」と呼ばれる独自エンジンだ。
1970年に米国で自動車の排気ガスを規制するマスキー法(大気浄化法)が制定されると、世界の自動車各社は頭を抱えた。
1975年以降に製造する車の排ガス中の一酸化炭素や炭化水素の排出量を70~71年モデルの10分の1以下にするなど、
この高いハードルをクリアできなければ、米国で新車が販売できなくなるからだ。
ホンダは「マスキー法がクリアできなければ乗用車事業から撤退する」という背水の陣で新型エンジンの開発を進めた。
その結果、マスキー法の施行される3年前の72年に、低公害エンジン「CVCC」を搭載した新型車「シビック」を発売したのだ。もちろんシビックは大ヒットした。
そんな歴史を持つホンダがエンジンから身を引く。「海外依存度が高いホンダはしょうがなかったのか」(トヨタ自動車幹部)。
トヨタの開発陣の心中は複雑だ。「欧州主導の脱炭素戦略にホンダも巻き込まれたか」との思いがあるからだ。
(中略)
ある大手自動車メーカーの首脳は「欧州の策略の念頭にあるのは日本車メーカーだ」という。
独フォルクスワーゲンやダイムラーなどはガソリン・ディーゼル車の不正燃費問題で多大な課徴金の支払いを迫られた。
体力がそがれるなかで、低燃費・低公害の日本車への脅威は高まっていった。
どうすれば日本車を締め出せるか――。そこでドイツ勢を中心にEUがひねり出したのが「カーボンプライシング」だ。
部品にまで脱炭素を求め、達成できないメーカーにはペナルティーとして排出権の購入を迫る。
その間に、ドイツ勢は日本や中韓などアジア勢に比べ遅れているバッテリーなどの開発を進め、域内の産業や雇用を守ろうというのだ。
■「ホンダにも欧州とは戦ってもらいたかった」
トヨタの2020年暦年の世界での生産台数は約790万台。うち、国内生産台数は292万台だ。
そのうち、174万台が輸出に回されるが、この輸出分に回る台数がそっくり欧州やさらには米国などに締め出された場合、国内の部品メーカーに与える影響は甚大だ。
資金的に余裕がない部品メーカーが割高なクリーン電力を使っていたら、採算割れするサプライヤーが続出する。
「日本の製造業を支える部分を根こそぎにしようという意図が透けて見える」(大手部品メーカー幹部)。
国内生産の規模が小さいホンダにとっては、EVに全面移管しても地域の雇用などに対する影響は少ない。
しかし、トヨタは取引先の部品メーカーが集積する地元・豊田市の存亡にもかかわる問題だ。
「ホンダにも日本の特殊なエネルギー事業を勘案して欧州とは戦ってもらいたかった」(トヨタグループ幹部)との声も漏れる。
(以下略、全文はソースにて)
https://president.jp/articles/-/45580
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Source: 車ちゃんねる
【車】ホンダの「脱エンジン」宣言に国内自動車業界落胆